渋沢栄一大蔵省を辞職 いよいよ日本近代資本主義の父となるべく歩み始める

2021年NHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公・渋沢栄一は、33歳の年に大蔵省を辞職しました。

渋沢栄一の生涯を書いた本の中には、井上馨と意見を同じくして辞めたと書かれているものがあります。

実際、そういう理由もあったでしょう。

しかし、渋沢栄一が口述した内容が本になった「論語と算盤」では、そうではないと渋沢栄一自身が言っていたようです。

では何がどうなって、どういう理由で大蔵省を辞めたのかを紹介しましょう。



渋沢栄一は井上馨と大蔵省を辞職する

明治の初期、日本を近代化するための費用は、いくらあっても足りないというのが実情でした。

政府内の各省の、予算の分捕り合戦が激しくなってきます。

そこに藩閥間でも、予算をよこせと大蔵省に詰めよります。

予算が底なしにあるわけではない大蔵省は、予算を勝手に乱用されては困ると、井上が説明しましたが、聞き入れられませんでした。

へそを曲げた井上馨は、病気と偽って、1ヶ月も出仕しなかったくらいです。

大蔵省の味方になってくれると思っていた、財政に明るい大隈重信までが、大蔵省の増額拒否の具申書を認めませんでした。

ここで井上はとうとうキレてしまったようです。

「おれは今日辞めることに決めた! 正当な道理が通じないということは、この井上を信任しないということだ。渋沢をはじめ、一同、後をよろしく頼む」

この時、渋沢栄一は即座に席と立ち、「私もご一緒します」といったそうです。

翌日、2人で辞職を願い出ました。

辞表を提出した3日後、2人は連名で「財政改革に対する奉議」を政府に提出しています。

国家の財政が破綻に陥っていることを、具体的に数字で明らかにしたものです。

これは当時の新聞や雑誌などにも全文が公開され、かなり物議をかもしたそうです。

「財政改革に対する奉議」の内容は、次のようなものでした。

全国からの歳入概算は、年間4千万円。
本年の国の予算として必要な額が、5千万円。
ここですでに1千万円が不足。

しかし、維新以来の負債が1億2千万円。
国の経費で賄わなければならない予算外の出費が、毎年1千万円。
合計、1億4千万円の借金があり、返す目途がない。

1円が現代の3800円くらいに相当するのです。
これではキレるのは、当然かもしれませんねぇ。。

なお、この一件から、国家予算は毎年公表されるようになりました。

日本は、近代国家になった明治から、ずっと借金国家のまま今に至る・・・のでしょうか?

『論語と算盤』で渋沢栄一が言ったこと

先述した大蔵省辞職の経緯を見る限りでは、健全財政を目指した井上・渋沢が、政府に腹を立てて辞めたように思えます。

しかし、『論語と算盤』の中では、渋沢栄一は次のように口述しています。

「私の辞職の趣旨は、もっとも振るわなかった商売を振興し、日本を豊かにしなければならないと思ったからだ」

政治や教育が近代化し、どんどん改善されていく中、相変わらず商売は卑しいものという意識が強かったのが明治初期の状態でした。

商売には、学問さえ不要とさげすまれていたのです。

しかし、物と金を流通させなければ、日本は決して豊かな国にならないという固い決意が渋沢栄一にはあったのです。

そして、『論語』を貫いて商売をすることも、この時には決めていたようです。

「民間より官の方が尊いとか、爵位などなどは、実はそんな大したものではない。
人間が勤めるべき尊い仕事は、至るところにある。
そして、間違いなく商売もその一つである。」

第二次世界大戦後、やっと日本がたどり着いた場所に、この時渋沢栄一は立っていたことになりますね。



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