宮城谷昌光著「香乱気」を読んだ感想♪

中国の歴史を主題とした小説の第一人者といえば、宮城谷昌光さん。

最初は夫が彼の小説が好きで読んでいたのですが、最近は私もハマってしまいました。

ただ、難しいのです。

 

まるで中国の漢文をそのまま訳したような文体。

加えて常用漢字外の中国漢字に近い沢山の人の名前。

カラマーゾフの兄弟に通じるややこしさがあります。

 

それでも、歴史上の有名な人物だけではなく、同じ時代を生きた秀逸な人材にスポットをあててのストーリーなので読み応えがあります。

難しい文体ですが、スピード感もあって読むことが苦になることはありません。

香乱気のあらすじ♪

物語は秦の始皇帝が圧政を行っていた終末期から始まります。

そんな圧政に反旗を翻した中に、項羽の叔父、項梁がいました。

項梁は剣の使い手としても秀でたものがあり、その剣を直々に教えられたのが田横という若者でした。

 

香乱気の主人公は、この田横という人物です。

秦の始皇帝が亡くなり、秦が滅亡へと向かう中、項羽と劉邦が天下を手中に収めるべく戦います。

元々、項梁の元では一緒に戦っていた二人ですが、項梁が戦死しタガが外れたことで敵対関係になりました。

冷酷だが人を騙すといったことはしない項羽、一方劉邦は自分を信じて同盟を結んだものにさえ、手のひらを反して惨殺するという非道さをもって進軍していきます。

そんな中、田氏一族は、弱者の立場を常に心に置き決して他国を侵略しないという信念を貫く一族でした。

やむにやまれぬ戦乱に巻き込まれ、次々と王が戦死し、やがて田横が斉の王位につきます。

 

人望厚く、見目麗しく、戦術にも長け、剣の腕は名だたる武将たちに響き渡るほどの彼でしたが、民の幸せを第一に考え戦火に没した村々を復活させることに尽力しました。

そんな彼の考えを支持するものたちが、中国全土から集まります。

 

そんな田横の国に、劉邦のたくらみが忍びよります。

香乱気を読んで・・

 

田横という名前を、中国の歴史の中で見た覚えはありませんでした。

でも確かにこの時代項羽と劉邦だけが戦っていたわけではありません。

それぞれの国の命運をかけて、沢山の戦火があがっていたことでしょう。

 

女に愛されるのはもちろんですが、男たちから慕われる田横という人物を、この香乱気という小説で知ることができて、とても嬉しかったです。

斉の国はどこにあったのかと、改めて調べながら本書を読みました。

 

冷酷な項羽に対し、農民から這い上がり漢の国を建てた劉邦を英雄だと思っていた私ですが、宮城谷昌光氏の解釈を借りれば、決してそうでは無いということにも驚きました。

劉邦こそ人望厚く、懐の深い人物と思っていた私はマンガの影響を強く受けていたいのかもしれません。

 

田横を主人公にしたことで、中国史に残る英雄たちの像を違う角度で見ることができました。

田横が即位するとき、「これは運命ではなく、道なのだ」と思ったという言葉があります。

運命がどうにもならないものだとすれば、道は目の前におのずとあるもの。

道は千変万化し万物を産む力さえ備えているものという解釈があるそうです。

 

黒田官兵衛を書いた「不屈の人」という本があります。

その中に「運命を想うと怨恨が生じ、思想と行動が限定されてしまうが、道を想えば自在となる」という言葉があります。

田横が思った道もこれに通じるものだったではないでしょうか。

 

香乱気まとめ♪

香乱気に関わらず、歴史小説を書くというのは計り知れない労力が必要だろうと思います。

史実を知り、その中の誰かにスポットを当て、スポットを当てた誰かの視点で当時の世の中を見渡す必要があります。

今回の香乱気は長い中国の歴史の中でも紀元前に位置する物語です。

これを紡ぎだす作家の宮城谷昌光氏に脱帽です。

まだまだ読んでいない本が沢山あるので、すごく楽しみです♪

 

 

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