title:伊坂幸太郎著「バイバイ、ブラックバード」を読んだ感想
今年になってなぜか伊坂ワールドに魅了されました。彼の作風は、時間軸を自在に操り、多くの場合オムニバス的な話を最後に繋げていくという手法が多いように思います。最初に彼の作品を読んだとき、こんなストーリーテラーがいたんだと感動したのを覚えています。
心にグッとくるかと問われたら、答えに窮してしまう気はしますが、そえゆえの軽さやリズムがとても楽しくて、読み始めたら止まらない作品が多いと感じています。
今回のバイバイ、ブラックバードは元々太宰治の未完の書である「グッドバイ」を完成させないかという、編集者とのやりとりの中で産まれた伊坂幸太郎色のグッドバイなのだそうです。
バイバイ、ブラックバードのあらすじ
星野一彦という男がいます。どうやら多額の借金を抱えてしまっているようです。そんな彼の元に、繭美という粗暴で巨体で国籍不明の女があらわれます。そして星野一彦に「あのバス」に乗るようにといいます。
繭美は星野一彦が「あのバス」に乗るまでの案内人であり、監視役です。そんな繭美に星野が最後のお願いをします。実は彼は5人の女性と付き合っている、いわゆる五股です。その恋人たちに、一人一人お別れを言わせて欲しいというのがそれです。
恋人である5人の女性と、星野の別れのシーンには必ず繭美が同行します。それぞれの女性たちとの別れを通じて、星野一彦という男が実はとても純粋で素直で一生懸命な男だということを表現しています。
そしてとうとう「あのバス」に乗るのですが・・・
あのバスって何?
一貫して「あのバス」としか表記されません。繭美の話も特に具体的なものではありません。これは読者の想像で埋めるしかないワードですよね。
しかし最後までそのヒントさえ出てこないというのが歯がゆいところなのです。あのバスって何?と、それを知りたくて読み進めてみたら、回送という看板を出した緑色のバスという設定だけ。バスの中の様子もどこに行くのかも、一切不明です。どこかに書いてないかと、最後に収録されている作者のロングインタビューまでしっかり読んでみました。
で分かったこと。分からないままで正解だということ。なんかモヤモヤのままです。
私は最初から凄く普通過ぎる想像をしていました。借金まみれの男なら、それを返済するまで、どこかに監禁され働かされてボロ雑巾のような人生を送るのではないかと考えていたのです。もしかしたら、それも正解なのかもしれません。
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