本能寺の変を題材とした小説は沢山あります。
それらを読み進めていくと、それぞれが本能寺の変が起きた原因を違う角度から見ていることが分かります。
言い伝えに近い史実に、個々の作家がフィクションを加えて作り上げたストーリーはどれも絶品ですが、今回は「本能寺の変が起きた原因」説別に紹介します。
2020年NHK大河ドラマ「麒麟が来る」では、どの要因が採用されるのでしょう。
信長と光秀の不仲説
不仲の内容にも色々あって、深い溝が描かれていたり、「人としてどうなのよ!」的な義憤があったり、二人のすれ違いが原因だったりします。
それらを全てまとめて不仲説としました。
吉川英治著 「新書太閤記」
この本は、題名通り秀吉が主人公ですから、光秀はわき役で登場します。
主君光秀への乱暴な責などの憤慨したのは、光秀の家臣たち。
そんな家臣たちの思いを察した光秀が、本能寺の変を起こすという内容です。
司馬遼太郎著 「国盗り物語」
武田征伐後、信長と光秀の対立が極限に達し、光秀の頭を欄干にたたきつけるシーンがあります。
光秀は将来を不安に思い、本能寺の変を起こしました。
堺屋太一著 「鬼と人と ―信長と光秀」
比叡山の焼き討ちなど、残虐な信長の行為を理解できない光秀は、信長がいる限り平穏はないと考え謀叛を決意。
南條節夫著 「桔梗の旋風」
主君信長の暴虐に耐え続けた光秀は、やがて神経が破綻してしまいます。
パワハラに耐えられずうつ病を発症してしまったゆえに、破滅への道を突き進んだという説。
山岡荘八著 「織田信長」
信長は光秀を高く評価しており、人前での責も光秀を鼓舞するためのもの。
それを光秀が察することができず、次第に溝が深まり謀叛を起こすに至った節です。
☆本能寺の変はなぜ起きた!?もう一つの歴史が見せる真実とはの記事はこちらへ ☟☟
黒幕説
黒幕説にも小説には二つあり、義昭説と秀吉説です。
それぞれを紹介しましょう。
邦光史郎著 「戦国夢幻帖」
15代将軍義昭黒幕説です。
フィクションをベースに書かれた本ではありますが、義昭黒幕説の先駆的作品です。
光秀は義昭から信長討伐の命令書を受け取ります。
そこで謀叛を画策するわけですが、実はこの命令書は現術師の偽造だったというストーリーです。
津本陽著 「下天は夢か」
主に秀吉黒幕説です。
主にと書いたのは、その他にも義昭や朝廷、堺の町衆が後ろで暗躍しているという背景を示唆しつつストーリーが展開されます。
池宮彰一郎著 「本能寺」
華やかな時代絵巻を描きながら、秀吉黒幕説でストーリーが展開します。
信長は当時の封建制度を覆すような大改革を計画していました。
それを覆すべく動くのが、義昭や公家の近衛前久らです。
秀吉の密使として派遣された細川藤孝の説得で、光秀は謀叛を決意します。
義憤説
筆者個人はこの義憤説+不安が少々と野望というのが有力と考えています。
徳永真一郎著 「明智光秀」
狭量で暴虐な信長に対し絶望感を抱く光秀。
主君信長の蛮行に終止符を打つために、謀叛を起こすという説です。
☆『本能寺の変の黒幕か!?足利義昭とは』の記事はこちらへ ☟☟
野望説
武将として生まれ、手が届く範囲に天下があれば取りに行くのが当然の時代です。
藤沢周平著 「逆軍の旗」
本能寺の変を決意した光秀の心理を細かく描いた作品です。
最初は信長に対する遺恨を晴らしたら自害する予定だった光秀に、秀満から天下を望むよう説得され、強敵信長に向かいます。
まとめ
この他にも「ここまで分かった!明智光秀の謎」・「私の先祖 明智光秀」「明智光秀の正体」など、次々と明智光秀に関係する本の出版が続いています。
それほど謎の多い人物であるということかもしれません。
それだけに1冊の本で分かったつもりになるのは如何なものかと思います。
時間がある時にでも、それぞれの作家が描く思い思いの光秀に会ってみてください。
あなたが思う光秀とは違う人物が、そこでは息づいているかもしれません。
コメントを残す