2021年NHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公、渋沢栄一がいよいよ動き出します。
始めての江戸で大きな刺激を受けた栄一は、尊王攘夷の思想を益々燃やしながら、自分もひとかどの国士になったつもりだったようです。
父からは、農民の身分をわきまえ稼業に精を出すよう何度も諭されましたが、熱病に浮かされたような栄一は聞く耳を持ちませんでした。
そして1863年、栄一は再び江戸に行きたいと父に懇願。
父も栄一を説得するのは難しいと考え、「息子を一人亡くしたつもりで許す。ただし無分別なことをして人の道だけははずすな」と言い聞かせ、江戸に送り出します。
愛情深く度量の大きな父に育てられたことが、栄一にとって生涯の宝となったでしょう。
渋沢栄一 討幕計画
江戸へ行ったのは同じ尊王攘夷の思想を持つ喜作も一緒でした。
幕府の暴政・崖っぷちの経済・人々の困窮をみるにつけ、尊王攘夷に向けて動き出す時だと決意した二人は、塾や道場に出向いては仲間を募っていったのです。
江戸で仲間を集めた後は、発覚を恐れていったん血洗島村に戻り尾高の家で計画を練ります。
時を同じくして、薩摩藩の行列を横切ったことでイギリス人が無礼切りにあった生麦事件が勃発しています。
生麦事件のようなショボいものでは駄目だと、尾高や渋沢栄一たちが練った計画は子供じみている感じがして、チョッと笑えます。
でも彼らは必至だったのでしょう。
討幕計画の内容は、こんな感じです。
①高崎城に夜討ちをかけて乗っ取り、武器を調達。
②近隣の尊王攘夷の志士たちを呼び集める。
③武器と仲間を伴なって横浜に向かう。
④横浜にいる外国人を片っ端から切り焼き討ちをかける。
⑤江戸の仲間たちも横浜に馳せ参じ、いよいよ騒動が大きくなる。
すると幕府はどうなると予測したのでしょうか?
①欧米列強から幕府は攻めれらる。
②幕府の政策を良しとしない各藩が蜂起する。
③幕府が倒される。
結果、天皇を尊ぶ強力な新政権を樹立し、国民が団結し、列強を排除できるというのものでした。
この時点では栄一たちは世界を知らないのですから、仕方がないのかもしれませんが短絡的だと思えませんか?
焼き討ちの決行日を風が強いだろう冬至の11月12日と決めています。
渋沢栄一 勘当願いを出す
血洗島村、中の家(なかんち)の一人息子にして跡取り息子の栄一は、もう稼業どころではありません。
討幕を狙って旗揚げすることまで計画しています。
自分の身の律し方として、父に勘当願いを出し養子を迎えるように申し出ました。
父は農民は農民として誇りを持ち、自分の分をわきまえ生きていくべきだと力説。
しかし尾高や喜作を伴なって父に面談した栄一は、「こんな混とんとした非常な時は、少しでもよい方向を目指して何かしなければ、どんどん悪くなる一方だ」と、父を懸命に説得します。
一緒にいった尾高や喜作の援護もあって、とうとう父は折れてくれました。
「お前は自分の信じるところに向かって勝手に進むが良い。今日からお前を自由にしてやろう。正しい道理を踏み間違えず誠意を持って事にあたり、思いやりを忘れるな」
栄一はこの後の人生を、まさに父に言われたとおりに歩む事になります。
幼い頃から学問に親しみ、何不自由なく育ってこれたのは、この父のおかげです。
栄一の勘当願いに対しては、「突然勘当すれば世間が怪しむ。罪を犯すことさえしなければ家に迷惑がかかることもないだろう」といって聞き入れませんでした。
ただ、いったい何をしたいのかとはしつこいくらい何度も聞かれたようです。
しかし、ここで全容を話すことだけはできません。
江戸に着いてから決めると言葉を濁し続けた栄一・尾高・喜作でした。
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